今回は注文住宅 - ローコストハウスメーカーで冬暖かく夏涼しい家を建ててみるシリーズです。
前回⑨まででカラーも決定し仕様はほぼ決まり・・・と思いきや、設計士さんから東京ゼロエミ住宅のことでアラームが入りましたので、最後にバタバタと再検討が入りました。今回はそのことを。
─ 目次 ─
東京ゼロエミ住宅とは
設計士さんからのアラームは東京ゼロエミ住宅の水準3がギリギリ…というものです。このブログでも、これまでに「お風呂は東京ゼロエミで指定された断熱浴槽・断熱蓋・シャワー手元スイッチが標準搭載のTOTOさんにした」とか書いてきましたが、改めて東京ゼロエミ住宅の基準を確認してみましょう。
都が推進するこの事業の正式名は東京ゼロエミ住宅導入促進事業。2021年以前からありますが、今年2022年(令和4年)4月から東京ゼロエミが3つの水準に分けられ、求められる性能が水準ごとに変わったのです。一番目を惹くのはその補助金で、水準1が30万円、水準2が50万円に対し、水準3は210万円と跳ね上がります。これ以外にオール電化ですと太陽光3kW搭載で39万円の補助金がもらえますので合わせて249万円の補助金となります。ここまで補助金額が違うと是が非でも水準3を狙いたくなります。設計士さんにも初回の打ち合わせで「東京ゼロエミ 水準3取りたいです」とお伝えしました。
東京ゼロエミ住宅 水準3を狙う
水準3は東京都の公報に「北海道相当の断熱性能と、国が定める基準より40%削減する高い省エネ性能の基準を設定」とあります。北海道といってもわかりにくいのですが、以下の「必ず適合すべき仕様」と「性能値」がわかりやすいです。
【必ず適合すべき仕様】
部位 | 主な仕様 | |
---|---|---|
開口部の断熱性能 | 窓 | 熱貫流率 2.33W/平方メートル・K以下 (例:アルミ樹脂複合サッシ + Low-E複層ガラス) |
ドア | 熱貫流率 3.49W/平方メートル・K以下 (例:金属製熱遮断構造の枠 + 金属製フラッシュ構造の戸) |
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設備の省エネルギー性能 | 照明設備 | 全室LED (玄関、トイレ、洗面・脱衣所、廊下、階段及び階段のうち1箇所以上は人感センサー付) |
暖・冷房設備 | 高効率エアコン設置(省エネラベル4★または5★) (リビングなど主たる居室に必ず設置) |
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給湯設備 | 高効率給湯器 (電気ヒートポンプ給湯器、潜熱回収型ガス給湯器など) |
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太陽光発電システム | 可能な限り設置が望ましい |
窓やドアは基準値が低すぎて特に気にしなくても適合できます。設備ですが、LEDは当然全室ですし人感センサも1か所どころか収納含めて6か所に設置。エアコンは最高等級の省エネ5★ですし、給湯も高効率な電気ヒートポンプ給湯器=エコキュートを搭載です。
なお設備は、これまでの記事でも記載しましたが、施主支給が原則NGのハウスメーカでは量販店やネット価格で安価に調達する手法がとれず割高なメーカ経由の取引価格で建物引渡し前に取り付けてもらわざるを得ないという問題があったりします。このあたりは以前記事にした「ローコストハウスメーカーで家を建ててみる⑧ 照明・エアコン - 空と山と暮らし」で詳しく。ポイント還元分まで考慮すると同じ設備を入れたとしても合計で+15万円位のコスト増になったりするのですが、210万円のためならしょうがない。
【性能値】
水準1 | 水準2 | 水準3 | |
---|---|---|---|
外皮平均熱貫流率(単位 W/m2K) ()内は木造以外の構造の住宅における単位住戸 |
0.70(0.70) |
0.60(0.70) |
0.46(0.60) |
国が定める省エネルギー基準からの削減率(再エネ除く。) ()内は木造以外の構造の集合住宅等における単位住戸 |
30%(25%) |
35%(30%) |
40%(35%) |
次に性能値ですが、外皮平均熱貫流率、いわゆるUa値は水準3で0.46W/㎡K以下です。ハウスメーカさんはUa値0.38と頑張ってくれており、これなら設備さえ気をつけていれば余裕かな・・・と思いきや!設計士さん曰く「省エネ基準からの削減率40%」がギリギリだと。
省エネ基準は、暖房・冷房・換気・給湯・照明の「設計一次エネルギー消費量」がどれくらい減っているかを見るのですが、この削減率も余裕があると想定していました。
家の性能のどこが弱いのか?
前述5つの設計一次エネルギー消費量のうち、最もポイントとなるのが先頭3つの暖房・冷房・換気の3点に関わる空調のエネルギーです。ただ、ローコストハウスメーカといえど、断熱気密には力を入れているメーカということもあり、以下仕様です。
- Ua値0.38 (窓:樹脂トリプル、壁:付加断熱ありの内外W断熱)
- C値0.5以下(保証)
- 全熱交換型の第1種換気システム
- 熱交換しない3種換気箇所となるレンジフードと1F/2Fトイレは、同時吸排レンジフードと人感センサー式高気密電気式シャッターファンで熱ロス低減
-
窓は基本をFix/ドレーキップ/滑り出しの小さめの日射遮蔽型とし、南面/吹き抜けを大型Fix/引き違いの日射取得型に設定。
建物としては今どきの基本を押さえた仕様で、さらに冬季日射取得しやすい日の出から日が差し込む開けた土地ということもあり計算的には好条件のはず。エアコンも省エネ基準達成率が最高水準の機種。あとはどこを見直せばよいのか・・・。
ηA値(ηAH)の計算方法が原因だった
家の性能については、ハウスメーカさんから頂いた断熱/熱橋情報と矩計図、それとエクセルシャノン社の窓性能値を用いて、私の方で一次エネルギー消費量を事前に試算していました。そのときは40%削減は余裕でしたので、どこでミスっていたのかと設計士さんに計算式を確認してみました。私の試算値とハウスメーカさんの計算結果を比較すると、UA値はピッタリ、冷房に影響するηAC値もほぼ同じ値でしたが、暖房に影響するηAH値に大きな乖離がありました。計算方法の詳細を確認するとηAC/ηAH値を計算する際の「取得日射量補正係数」の計算方法に違いがあることに気づいたのです。
ハウスメーカさんは固定法(ηAC用の補正係数fC=0.93、ηAH用の補正係数fH=0.51)で計算していて、これが会社取り決めの方法ということでした。取得日射量補正係数は「固定法」以外に「簡略計算法」または「日よけ効果係数と斜入射特性を用いる方法」が採用でき、後者ですと方位係数x日射浸入率に庇を考慮した計算が行われてηAHがより実態に合う値で算出されます。これが固定法ですと、南に遮蔽物が全くない窓でも、冬の日射取得が更に半分(51%)しかない条件で計算することになります。なるほど、これでは実態と乖離した低い性能値になるわけです。ですが、これがハウスメーカ標準のやり方ということで、今から計算を変えてもらうにも時間がかかりますし、この計算方式のままゼロエミ水準3に適合できる対応を考えなければなりません。私の一次エネルギー消費量の計算結果を東京都に提出するわけにもいかないですからね。
ただ、補正係数の取り方の違いでゼロエミ水準3が厳しいとなると、もしかしたらコスパの良いHEAT20 G2.5レベルではなく更にHEAT20 G3を目指さないと駄目なのかとか頭をよぎりました。
しかし設計士さんからは「計算値を良くするにはエコキュートと水栓を見直し」とのこと。なるほどエコキュートか。でも水栓とは…?
エコキュートの見直し
とりあえずエコキュートから。こちらは年間給湯保温効率というものが機種によって変わります。どのメーカもコスパが良い年間給湯保温効率3.3~3.4が主力製品ですが、一部メーカで年間給湯保温効率4.0というプレミアム機種をリリースしています。こちらの方が省エネになるのは明らか。7月の打ち合わせで設計士さんから「ゼロエミのためプレミアムエコキュートに変えたお客様がいる」と聞いていましたので、心の準備もありました。
なお、東京電力が今年から始めた、くらし上手|電気料金プランは太陽光発電を使って昼にエコキュートを沸かせられる人に限定の新プランなのですが、そこで指定された対象エコキュート(太陽光自家消費促進型給湯機)は年間給湯保温効率が3.4の4製品のみ(2022年9月時点)。東京ゼロエミと両立できなくて駄目じゃん…。
設計士さんから提示された年間給湯保温効率4.0のプレミアムタイプはオプション+20万円。性能3.3→4.0への変更で平均的な家庭で年間1万円程度の光熱費削減が見込まれているものですが、エコキュートの寿命10〜15年を考えると費用対効果はマイナス。年間1万円の試算もあくまで平均的な家庭であって、二人家族のウチは給湯の使用量がそもそも少ない上に、太陽光の自家消費で昼にエコキュートを沸かすため余剰の売電が増える程度。今の売電単価でみると年間1万円のプラスは絵に描いた餅です。費用対効果を計算するまでもなくウチの使い方では買ってはいけない設備なのですが・・・東京ゼロエミのためにやむ無し。
水栓の見直し
よく分からないのが水栓の変更。確認してみると、自動水栓にすると計算値が良くなるとのこと。手動水栓でも「エコカチット」水栓ならゼロエミ仕様の必須条件は満たせるのですが、省エネ基準40%削減の計算値のマージンを取るために自動水栓推奨ということです。
もともと東京ゼロエミ検討以前から自動水栓は見積もりしており、左が+11万、右が10.5万となかなかお高くどうしようかなと迷っていたのですが、東京ゼロエミが背中を強引に押すことになりました。
→その後、設計士さんから計算見直しで自動水栓無しでもOKになったとの連絡があり、最終的には手動水栓にしました。自動水栓は便利そうですが、やはりお高いですからね。
そして仕様決定へ
以上で仕様の最終決定。これで来週には最終図面承認と変更契約。10月に基礎工事が始まる予定です。
予定通り家が建つといいな〜。
家を建ててみるシリーズ⑪へ続く
ひとつ前の家を建ててみるシリーズ⑨の記事はこちら。
家を建ててみるブログのシリーズ初回。