空と山と暮らし

パラグライダーと山歩きの記録、ときどき家と暮らし。

冬の高気密高断熱住宅で狙う湿度レンジ

先月初旬に冬の加湿について記事にしました:

12月1日時点では『加湿器を買うなら加湿性能と消費電力のバランスから「気化式」か「気化ハイブリッド式」を考えています』と加湿器を買う気満々でした。しかしその1週間後、お風呂のお湯貯めの加湿効果が想像以上でして「加湿器はいらない…?」という記事を書き、年末にも「太陽光発電は冬至にどうなる?」で加湿状況を再確認して、加湿器の購入を様子見にしていました。

日射取得で部屋が暖まる昼(屋外の絶対湿度:2.90g/㎥)でも屋内の絶対湿度は9.56g/㎥を維持しており、各部屋の相対湿度も一般的に推奨される40%~60%の範囲に収まりましたので、加湿器は不要かな、と。

ところが1月に入り少し様子が変わってきましたので、今回はそのことを記事にしてみます。

─ 目次 ─

暮らしの変化

1月に入って変わったのが週末の過ごし方。師走は忙しいと言われますが、我が家もそれに漏れず色々な行事があり、宿泊の山行は「12月2日の霊仙山を歩く」の1回だけ。その後は年末年始まで大掃除や会合の合間に日帰りでフライトに行く程度で、つまり12月は在宅が多かったのです。

ところが年末からは、実家行脚で長く家を空け、その翌週(先週末)は宿泊スキーで家を空けました。これから雪山シーズンですので、今後もスキーや雪山に泊りで行くことが増えることが想定されます。

で家を空ける機会が増えるとどうなるか。生活の自然排湿が激減します。

外泊時の湿度変化

下図は先週末の我が家のLDKの相対湿度の記録です。スキー出発が1/13(土) AM4:00、AM6:00時点は湿度が51%ありましたが、帰宅した翌日1/14(日) 20:00時点は下限ギリギリの40%に到達。

 

泊りに行けば人間の呼吸等の排湿が無くなり、洗濯乾燥機や食洗器も使いません。お風呂は水を貯めているものの、冷めきってサーキュライトを稼働しても水の蒸発量は下がります。加湿量が変わらないのは、出発前に水を多めにあげた観葉植物くらい。一方、高気密高断熱住宅では室温が下がりにくく、(全熱交換換気は顕熱より潜熱の方が交換効率が低く室温より絶対湿度の方が維持しにくいため)、相対湿度が大きく下がり40%ギリギリになってしまうのです。

 

人が居なければ乾燥しても良いという考えもありますが、

  • 帰宅後の自然加湿に時間がかかる
  • ピアノのあるLDKは外出中も湿度を安定させたい

という点から、在宅中の暮らし方の工夫だけでは湿度管理に限界がありそうというのが見えてきたのです。で、最後の一押しは「肌保湿のため家の湿度を高めにしたい」という妻からのリクエスト。これに応えないわけにはいかない…!

期待する湿度レンジは?

長期外泊時はさておき、暮らし方の工夫で加湿器なしでも一般的に推奨されている相対湿度40%~60%に収まります。ただ湿度60%は水分量で40%の5割増しですので、物理的には大きな変動量です。我が家のパターンとしては、夜の風呂上りに相対湿度が60%近くなり、洗濯乾燥や食洗器が動く午前は50%台を維持し、昼から夜にかけて40%台になるのですが、午前/午後で肌の乾燥感に違いがあることが体感で分かります。

そう考えると、一般的によく言われる冬の40%~60%の湿度管理というのはちょっと範囲がラフすぎる気がしていまして、快適性を真剣に考えるなら、狙うべき湿度レンジを絞る必要があると考えるようになりました。去年の冬までの賃貸時代はそこまで追求しなかった(そもそも低気密低断熱では実現しえなかった)のですが、新居では夏にF式+再熱除湿エアコンで相対湿度45%~50%をキープでき快適でしたので、相対的に冬の湿度管理が雑に思えてきたのです。

さて肌保湿について調べてみると、湿度60%が保湿に良いとか、人によって角質層は65~75%が良いとか色々な説がありました。さすがに70%まで行くと樹脂サッシ/断熱壁/屋根の結露やカビ発生リスクがありますので、そこまでは攻められない。もう1つ、ピアノは調律師さんのブログ曰く、許容レンジは広めなものの温湿度の変動が良くない模様。

これらを勘案して、今シーズンは湿度レンジ55%~60%を狙ってみることにしました。

・・・うむ、ストライクゾーンが狭い。

これを狙うとなると暮らしの工夫では限界がありまして、潔く加湿器を導入することにしました。

加湿器の検討

加湿器を購入するにあたり、まずどの程度の加湿性能が必要なのか試算してみます。

前記事に書いた通り、我が家はヤマト住建標準のPanasonic製 全熱交換式の第1種換気を採用しており、C値0.4では換気で排出される水分の52%を回収できる見込みです。

さらにPanasonicの熱交気システムは風量設定として「自動」「標準」「弱」の選択があり、「標準」では設計時の換気基準:0.5回/hの風量になりますが、通常使いの「自動」設定ですと環境に応じて風量「弱」レベルまで適宜絞られます。

冬の実動作は、風音というアバウトな観測ですが、「弱」レベルでした。LDKに設置したCO2センサは常に700ppmを下回っていますので、換気量を絞って問題ないようです。換気基準:0.5回/hは少人数の家では過剰と言われることもありますが、このような風量制御により、設計値以上に水分ロスを少なくできているという印象です。(風量が下がると全熱交換の潜熱回収効率が上がります。これにより加湿器なしでも冬の相対湿度40%を維持できていたのかもしれません)

この家の換気性能と暮らしの生活排湿により、水分量としては悪い時でも相対湿度40%でバランスしており、ここから+15%アップで相対湿度55%を狙うことになります。室温22℃で考えると、絶対湿度:7.77g/㎥→10.7g/㎥に加湿です。居室(扉開放の玄関等含む)の気積が230㎥ですと、(10.7-7.77)×230 ≒ 674mLを追加で加湿することになります。

さて、加湿性能p [mL/h]の加湿器をn時間動作させた時の水分増加量v [mL]は、超概算で次の漸化式になります。(外気湿度0%の最悪値想定)

 v_0 = 0

 v_{n+1} = (v_n + p) × (1 - a \times (1 - b) - d)

・a: 換気回数 (0.5 [回/時]) ※冬季の自動モードは0.3だが、設計値を使用

・b: 潜熱回収 (0.7)    ※潜熱交換は顕熱より効率悪く70%に低下

・c: 気密性能 (0.4 [c㎡/㎡]) ※我が家

・d: 漏気量 (0.04 [回/時]) ※東京住宅街の冬季気温差でC値0.4から推定

 

分単位で概算水分増加量を確認するpythonコードを書いてみました:

def f (p, n, a = 0.5, b = 0.7, c = 0.4):
  k = 1 - a / 60 * (1 - b) - c / 10 / 60
  v = 0
  for i in range(1, n + 1):
    v = (v + p / 60) * k
    print("%3dm (%d:%02d) %.1f" % (i, i/60, i % 60, v))

さて、どの程度の時間で加湿させたいかですが、基本的には加湿器は動かしっぱなし運用を考えていますので、急速な加湿はそれほど必要ない想定です。例えば加湿性能:300mL/hの加湿器の場合、上記計算では2時間57分で+676mLになり、必要な水分量674mLを超えます。3時間未満なら許容範囲ですね。ちなみに漸化式の先を計算してみると、約40時間後に+1,574mLに到達し、それ以上は湿度が上がらなくなります。これが我が家における加湿性能300mL/hの加湿器の限界値。ただし、この時の相対湿度は75%でカビ限界を超過していますので、設定した湿度で自動停止する機能は必須ですね。(到達前に水タンクが空になると思いますが、一応)

もちろん、これは相対湿度40%下限に落ちた環境の最悪値で、ベースの相対湿度が高ければもっと時間が短くなります。また安全をみて加湿性能500mL/hにすると、1時間34分後に+676mLになりますので、クイックな加湿を求めるなら上位機種といったところでしょうか。ウチとしては加湿性能300mL/h程度で十分に思います。この性能でコスパの良い加湿器を探してみましょう。

今おススメ加湿器は?

温熱の神様 松尾設計室の松尾さんは気化式を推奨です。

松尾設計室ブログの別ページではPanasonicの加湿器を紹介していました。運用コスト(電気代)の点では気化式が圧倒的。これが鉄板ですね。ただ、情報が2019年と古いので、念のため最近の情報も押さえておきたい。

そんな時にタイミングよく、以前にもブログで紹介した「家づくり せやま大学」の瀬山さんが加湿器選びの動画を公開されました。

こちらは、気化式+過熱式のハイブリッドを推奨です。運用コストとしてメンテの手間等も考慮してコスパの良い加湿器を選んでいました。せやまさん紹介の機種はダイニチで、おそらくこちらの安価なアウトレット品。

【楽天市場】【数量限定アウトレット】ダイニチ 加湿器 ハイブリッド式 プレミアムブラウン プレハブ洋室24畳 木造和室14.5畳 HD-RX900A(T) 0H46690:ダイニチWebShop 楽天市場店

進化の少ない加湿器業界では、1年前の型落ち品でも問題ないという判断でしょう。ポイント還元分を単純に引くと 18,000円で、確かに安い。さすが、良いアイテムを見つけてきます。

ダイニチは気化式+過熱式のハイブリッドですが、「ecoモード」にすると消費電力18W(加湿量460mL/h)の気化式固定で動作させることもできます。先の計算式では1時間44分で+678mLに到達。そして急ぎの時は消費電力500Wで加湿量960mL/hのターボモードにもでき、なんと46分で+684mLに到達できます。我が家では、ほぼecoモードしか使わないと思いますが、いざという時のブーストは便利ですね。またタンク容量が6.3Lと大きく、水の補充頻度が少ないのも良いです。また、ダイニチは静穏性にも定評があるようで、我が家はLDK横の和室の冬用エアコン下に設置予定なのですが、LDKが静かになるのは大きなメリットです。

 

一方、気化式のPanasonicですと、今買うとしたら Panasonic FE-KFW07

kakaku.comの最安値が22,985円で悪くない。加湿性能は「中」モードの6Wで500mL/h、ターボは16Wで800mL/hとダイニチより更に省エネ。特にターボモードでも消費電流の増加が抑えられているのが良いですね。ただ、タンク容量が4.2Lと小さい点と、希望湿度の設定が無く恐らく60%固定(ダイニチは50%, 60%, 70%の設定ができる)という違いがあります。特に後者の湿度設定機能が気になりまして、例えばダイニチでは

  • 万が一樹脂サッシが結露する場合は設定湿度を50%にできる。
  • 長期不在の時にできるだけタンクを温存するために50%に落とす。

といった融通がききます。ということで、今回はダイニチで行くことにしました。

購入した加湿器

ダイニチに決めたものの、アウトレット品というのが少し引っ掛かりました。で、今の最新機種を調べたところ、2023年8月発売のHD-RXT723がヨドバシカメラで値引き販売されていました。

ネット販売モデルのHD-RXC700(中身はRXTと同一)より安価で、ポイント還元分を引くと20,358円。アウトレット品との差額は2,358円。うむ、悩む。

なおアウトレット品の旧型RX900と違い、こちらのRXT723はターボモードの消費電力が310Wで800mL/hの加湿性能になります。これでも十分ですし、一番使う「ecoモード」の消費電力は18W(加湿量460mL/h)でRX900と同じ。性能面では大きな差がありません。となると、あとは新型モデルチェンジでの細かな改良点の差になります。ここで新型にはデザインの洗練化以外に新たな機能が加わったことに気づきました。それが「カンタン取替えトレイカバー」。

今までダイニチの最上位機種にしかなかった交換式のトレイカバーが、去年モデルからミドルクラスのRXT(RXC)シリーズにも採用されたのです!

もともと抗菌気化フィルター(上図の青いフィルター)は赤い使い捨てタイプに交換可能ですが、その下の水の溜まるトレイは汚れやすく定期的に洗う必要がありました。ここが使い捨てできるようになります。カバーは500円/年と高めですが、利便性(日々の清掃の時給換算?)を考えたら十分アリではないでしょうか。(本当に節約するなら、カバーの上にラップして使い捨てるのもアリかも?)

 

ということで、最終的には新型RXT723をヨドバシでポチってみました。すぐに出荷の連絡が来て、明日1月19日に届くようです。1月20日大寒の前に到着しますので、入手したらいろいろ実測してみようと思います。

 

お決まりのハッシュタグを書いて終わります。(ヤマト住建の公式アンバサダーになった経緯はコチラ

#ヤマト住建公式アンバサダー

#yjオーナー